ライトノベル・レビュー

ワンダフル・ワンダリング・サーガ(矢治 哲典 イラスト:矢野たくみ ファミ通文庫) new

 俺の名前は鈴木正晴。しがないサラリーマンで、明日は出張で5時起きの忙しい身だ。しかし、会社帰りに「助けて!」という声を聞いて探してるうちに何故か見知らぬ世界へ迷い込んだ。しかも、どうやら俺を呼び込んだチビガキ〜ピヨリというらしい。護衛のクマ(コイツはスパルタカスだそーだ〜はこう言いやがった

「勇者様、この世界をお救い下さい!」

無論俺の答えは決まってる

「断る!!」

 てな感じで始まるのがこの物語。出だしだけ見ると、ファンタジーというかRPGでおなじみの異世界召還モノのパロディ。しかし、ちょっと違うのは、主人公は少年ではなく、成年。普通に仕事をしているサラリーマンということでしょう。なもんで、この世界を否定したがるし、帰りたがるしピヨリに協力しようとしない。
 でも、それは単に嫌だからというわけではなく、明日の仕事が自分の会社にとって重要な取引だと知っているから。他にも、彼の口から語られる仕事の厳しさや、キツイけれど楽しいところなどは働いたことある人ならある程度の共感は得られるのではなかろうか。

 その後「魔王を倒せば元の世界に戻れる」というピヨリの言葉を信じて同じく召還された幼馴染と出会ったり魔物と戦ったりしながら旅を続けていくうちに、この世界の真相を知ることになるわけですが、これ以上はネタバレゆえに書きません。ただ、私が思ったのは「人は何かを捨てながら成長する。それは寂しいことだが、悲しんでもいられない、それが生きるということだから。でもたまには思い出すのも悪くは無かろうか、生きてきた証拠として」

 この終わりは切なくも優しい。えんための審査員は「童話みたいな話」と評したそうだが言いえて妙だろう。もしくはドラえもんのような話というか。主人公・正晴やそれ以上の人にとってこの物語は架空でありながら、どこか他人事ではなく感じるのではなかろうか。ラノベの主な読者層である中高生向けではないんで、誰にでもオススメできる作品ではないが。

 私がこの本の読んで思い出したのが「ゼルダの伝説 夢を見る島」のラストでしょうか(別にパクリとか言うわけではない)。そんなわけで「夢を見る島」のラストのセリフで感想を締めたい。ちとうろ覚えですが
「夢は目が覚めれば消える。しかし夢に見たことは心に残る。その心に消えない思い出こそ夢ではないだろうか」
(はろmk−II)




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