ゲームレビュー

Fate/stay night(TYPE−MOON 18禁 ノベル)

 同人時代「月姫」で話題を呼び(同人作品ながらアニメ化までされた。まあアニメの評判はアレだったらしいですが)、本来その1作限りのサークルのハズが商業化までされてしまった伝説のサークル「TYPE−MOON」の業界に飛び込む1作目とは?

 Fate/stay nightレビュー

 今回は「演出」「キャラ感想」「ストーリー雑感」の3つでいこうかと。あ、エロゲですがHシーンに関する感想はナシ。とはいえエロゲの感想ではあるんで一応注意。

「演出」
 このゲームは話事態も優れてるが、それを盛り上げる演出によって素晴らしさが増してると思うんで、特徴的な演出を挙げると
・立ちキャラの拡大(近づくと大きくなる)&立ちキャラの移動(立ちキャラが動く)
・イベントグラフィック(1画面の1枚絵)のカットイン的使用
・効果音
 辺りか。

 これらは別に目新しいものではない。「立ちキャラの拡大」は「腐り姫」(LIARSOFT)や「はちみつ荘deほっぺにチュウ」(ぱれっと・しかしハズいタイトルだ)あたりが嚆矢を付けてる(余談だが、この2社は演出が上手い)。又、立ちキャラの移動では「結い橋」(ういんどみる)あたりで大々的にフューチャーされていた。
「イベントグラフィックの拡大」ならそれこそ「To Heart」(leaf)の頃からある。「効果音」は特に思いつかないがALICE SOFTは音楽関係も素晴らしいと個人的には思う。

 だが、この全てを高水準で纏め上げたソフトを私は知らない。否、知らなかったというべきか。

 とにかく、相互作用による完成度が高いのである。それが顕著に現れるのが戦闘シーン。エフェクト・カットイン・効果音(剣戟の音が特に良い)が相まってかなり臨場感溢れる出来栄えです。

ここから先はネタバレ全開になるんで注意

「キャラ感想」
●セイバー
 Fateの正ヒロイン。正直で正道を重んじ正論を吐く正に騎士の鑑にしてその正体はアーサー王。でも日常ではワリとズレてたり(元・王様ですし)大飯喰らいだったりするギャップが楽しいキャラ。士郎とはかなり似たもの同士なんで、あの終わり方は悲しくも正しいかなと思ったり。
●高坂 凛
 ヒロインの一人。ツンデレキャラの鑑。プロローグは凛視点だし、どのルートでも士郎を導く立場なんで出番が多く必然愛着も湧くキャラ。攻撃力は高いが装甲が薄いZガンダムのようなキャラで、基本的に士郎をおちょくって楽しんでるが何気ない一言で大いに照れまくったり、普段は完ぺき主義なのに肝心なところでミスったり、冷徹なリアリストに見えて実は人情家だったりと魅力溢れる人物。
●間桐 桜
 ヒロインの一人。慎二の妹だが実は義理で凛の実妹。他の2ルートでは早々に退場するんで自分のルートでは大活躍かと思いきや、違う意味で大活躍だったキャラ(ギャルゲーマー的には期待外れでエロゲーマ−的には大満足と言えばニュアンス伝わるかと)。その活躍ぶりはキレたカトルに勝るとも劣らない。力を手にしたら調子に乗るのは実は慎二似ではないかとか思ったり。
●イリアスフィール・フォン・アインツベルン
 準ヒロイン。年齢制限のため悲しいかなヒロインになれなかった不憫な娘。残酷な面も無垢な面も合わせて純粋なキャラ。切嗣の子供かと思ったらホムンクルスだった。軽快に動く立ちキャラが印象的。どのルートでも悲しい結末を迎えてしまうだけにファンディスクか何かで補完希望。というか、桜ルートは元々イリアルートに分岐する予定だったらしい。イリアと桜の2択とかあったら間違いなくイリアの方に行ったねDIO様は言ったネ。
●藤ねえ
 タイガー、以上(マテ)。士郎の保護者みたいなもので彼の日常を代表するキャラ。彼女が出なくなったら後は闘いのみと考えてよい。しかし、彼女の真の魅力は「タイガー道場」に尽きるだろう。タイガー道場ってのは、BADエンド迎えた時にヒントを教えてくれるものだが(月姫にも同様のものがあった)、製作者の悪ノリが炸裂しててむしろコレを作るためにBAD増やしてませんか?といった本末転倒も無きにしも非ず。や、面白いからいいんですが。
●衛宮 士郎
 主人公。エロゲの主人公にしてはクセが強い。つっても行動&言動が破天荒な鍵系のソレではなく、(1)地の文の一人称がフルネーム(これは前作・月姫もそう。どうも第3視点から語られてる感アリ)、(2)トラウマあり。(1)はともかく(2)は自分が悪いわけでもないししょうがないんでは?という感が無きにしも非ず。なんつーか背負い込みすぎなのだ。
 ただ、それを振り切った後の凛ルートでギルに言った
「行くぞ英雄王。宝具の準備は出来てるか?」
はFateで一番格好いいと思ったセリフ。
●アーチャー
 凛のサーヴァント。サーヴァントは通常英雄や有名人がなるものだが彼の出自は不明。その正体が明らかになるのは凛ルートでその正体は士郎自身(正確には未来で英霊になった本人。普通未来からは呼べないが、彼と繋がる持ち物〜ペンダント〜を持ってたので召還できた)。.
 英霊の仕事がイヤになったんで過去の自分を殺そうとする困ったさんだが、皮肉な見方をすれば、彼が召還できたこと自体が今の士郎は英霊エミヤにならない証明に思える。どのルートでも中々オイシイところを持って行くスナイパーでもある。
●ランサー
 誰がマスターか謎のサーヴァント。実は言峰のサーヴァントでその正体はクーフーリン。出会いがアレだったんで初めの印象は悪いが実は豪放磊落な人物。彼の活躍が見れるのは凛ルート(つかこのルートは各サーヴァントの話がメイン)。メガテンで彼に親しんできた者としてはセーバールートや凛ルートの彼の最後は格好良かったが、桜ルートではあっさり退場して悲しかったり。
●バーサーカー
 イリアのサーヴァント。殺意の波動に目覚めたモノ・・・ではなく正体はギリシャ神話最大の英雄ヘラクレスの栄光。セイバーに勝るとも劣らない能力にに加えて12回真でも大丈夫という化け物じみたキャラだが、その実最初のセイバー戦以外は実質やられ役なのが悲しい(凛ルートではその場面すらないし)。その分、セイバールートでの2回目の戦いは素晴らしかったが。
 凛ルートでのイリアとバーサーカーの話に涙した私(最近涙腺緩くなったが、Fateで涙したのはこの場面のみ)としてはもう少しいい扱いを希望(ファンディスクあたりで)
●ライダー
 慎二のサーヴァント、セイバー・凛ルートでは単なるやられ役だったが、桜ルートにおいて実は桜のサーヴァントだったと判明。つか、桜ルートは半ばライダールートともいえる。ペガサス乗ってた時点でギリシャ系とは思いましたが、正体は魔眼の主・メドゥーサ。基本的に控えてて主のことを最優先するという実はサーヴァントらしいサーヴァント。
 それまでやられ役だった鬱憤を晴らすように桜ルートではラスト付近のペレロフォーンvs黒エクスカリバー、EDでの眼鏡等見せ場は充分。
●葛城宗一郎
 主人公の通う学校の先生。実はキャスターのマスター。召還したマスターではなく、彼女を拾ってマスターになる。想定外の攻撃とは言え生身でセイバーを倒すほどのスパルタンX。どーも彼については情報が少ないんで、魅力あるが評価しずらいキャラである。
●キャスター
 宗一郎のサーヴァント。一見悪女だが実は純粋だったりする彼女の正体はギリシャ神話の魔女・メディア。凛ルートでの最後のシーンは悲しくも美しい。
●佐々木小次郎
 キャスターが呼び寄せたアサシン。何故アサシンと表記しないかは本当のアサシンは別にいるため。宝具も正体すらもない彼がああまで強くただひたすらに闘いのみを求める姿は美しい。凛ルートでのセイバーとの闘いは宝具やスキルに頼らない闘いとしては白眉かと。
●間桐慎二
 桜の姉。一応主人公の友人。一応士郎の友人ってことだが、人を見下した態度や力を手にすると調子に乗るところといい典型的なヤなキャラ。単なるヘタレならともかく、妹に手を上げたりあまつさえ手を出してたりしたとあってはどーしようもない。開発者(とその代弁者である士郎)はフォローしてたが、どうも嫌悪感しか沸かない。
●言峰綺礼
 聖杯戦争の管理者。神父。一見怪しそうに見えていい人かと思わせながら実は黒幕だったと裏の裏をかいてくる人物。何気に武闘派で格好いいが、結局彼は真性マゾってことでFAか?
●ギルガメシュ
 前回の聖杯戦争時のアーチャー。マスターは言峰。通称ギル様、と言っても笛を吹いてシローを苦しめたりはしない。やたら人を(というか自分以外のもの)を見下してるところやインチキじみたスキルは正にラスボスっぽいが、微妙に性格が抜けてる感じがしないでもない。つか、桜ルートでの死に様はオマヌケ感すら漂う。なんで妙に憎めないのは私だけか?

ストーリー雑感
●Fate
 通称・セイバールート。Fateの最初のルート(これは固定)にしてFate入門編ともいえるルート。

 主にセイバー(士郎)の過去について語られるルート。白眉はvsバーサーカー戦で、凛の攻撃→「やったか?」→煙の中から何事も無いように出現、までは読めたものの12回復活とは予想外。ただでさえ強いのにどうやってこんなのに勝つんだ!というハラハラ感とそこからの逆転劇のカタルシスは戦闘の描写が素晴らしい本作でも1・2を争うデキかと。
●unlimited blade works
 通称・凛ルート。Fateぼ裏ルートというか応用編(セイバーと士郎の話を他まで広めたという意味で)というか
 主に士郎というかアーチャ−の謎について語られ、各マスターとサーヴァントの関係がよく描かれてる上に展開も予想外という個人的に一番お気に入りのルート。

「キャラ感想」でのアーチャーの項と被るが、アーチャーの正体は意外。ただ彼の思惑についてはグチっぽい感じがあるが。後、彼は未来の士郎だが、各ルートのヒロインのように支えてくれる存在に不幸にも出会えなかった士郎というある意味別の存在ではないかと個人的には思う。

 マスターとサーヴァントの関係については、Gロボを思わせるようなバーサーカとイリアや、実は純情一直線なキャスター(と宗一郎もか?)。又、出会いがアレだしマスターもアレなんで残酷なヤツかと思いきや義理堅く漢気のあるランサーや儚くも美しいアサシン等等魅力ある人物が多い。

 戦闘も、無敵のセイバーが生身の人間にやられるという衝撃の展開のセイバーvs宗一郎。最強の矛と無敵の盾という矛盾の故事を思わせるアーチャーvsランサー。圧倒的に不利な状況を覆す凛の策は?が痛快な凛・士郎vsキャスター・宗一郎。何か雄飛の河原での殴りあいみたいな士郎vsアーチャー。タイマンのチャンバラ勝負を思わせるセイバーvsアサシン。そして絶対の危機に主人公の秘められた能力が開花!なベタな展開が燃える士郎vsギルと名勝負の多い本作でもこのルートはどれも良い。

 ま〜、凛は萌え萌えだしセイバーが現世に残る可能性のあるのはこのルートだけでもあるしと本音も書いておく。
●Heavens feel
 通称・桜ルート。Fateno真相ルート。聖杯戦争という本作の根幹を成すものの謎に迫る。
 一言で言えば、タネ証としては優秀だがストーリーとしては他のルートに比べると落ちるかなと。というのも、桜が他の2人に比べてキャラ的に弱いというのがある。
「キャラの優劣でストーリーを語るな」と言う向きもあろうが、桜に対して思い入れがもてないと、桜を救おうとする士郎とプレイヤーの心情が一致しない。そうなると折角の話も「あ〜、何だか話をまとめようとしてるな。話は面白いけど俺は部外者だな」と思ってしまう(私の場合だが)

 ただ、それまでのルートでは単なるやられ役に過ぎなかった(つか正体すら不明)ライダーが活躍するのは良し。こうして見ると全てのルートを通じて全キャラにスポットを当ててる構成には称賛する他ない。
 ペレロフォーンvs黒エクスカリバーは単純な力と力のぶつかり合いとして燃えるものがあるし、何よりEDでの眼鏡っ娘は良い。桜ルートではあれが一番印象に残ったという意見が多数挙げられている、私内部で(マテ)

 一方、真・アサシンと蔵硯の悪者コンビは特筆すべきことナシ。特に最後が・・・アサシンはあっさりとやられるし、蔵硯はあれだけやっといて何か悟ったようなこと言って往生するんでカタルシスが足りない。むしろ言峰の方が徹底した悪ってことで目立ってたし

まとめ
 正直TYPEーMOONが商業ベースとしてFateを出すと聞いた時、少なからず不安があった。それは「同人作品に毛が生えた程度のデキの商品を作りはしないか」と思ったからだ(もっとも同人以下の作品も少なからずあるのがエロゲ業界なのだが)。しかし、Fateを実際にプレイしてそれは杞憂どころかそこらの作品を軽く凌駕する作品ー名作だと知った。

 長いという欠点はある(公称60時間・実際のプレイからすると30時間ちょい?)が、話の大筋は「過去の英雄を集めてのバトルロイヤル」という少年漫画にもできそうな娯楽性の高さと敷居の低さを持っているので興味がある方は是非一度プレイしてほしい。まだまだ豪華設定資料付きの初回版が残ってることだし。




トップへ
戻る
前へ





SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送