ADVの演出技法

最近、「アタラ」(「Fate/ホロウ アタラクシア」の略。何か千手斬舞飛んできそうな略ですが)だの「はぴねす!」だの「AYAKASHI」だのゲーム演出に凝
ったエロゲが多くなってるんでちょっと書いてみようかと。主にエロゲから題材に取るけど、むしろADVにおける演出という題材でエロ関係は全くなし。

ADVにおける演出は

立ち絵(通常表示されるキャラのバストアップグラフィック)
一枚絵(所謂「イベントCG」。全画面を使ったグラフィックを指す)

の2つだけ、といっても過言ではない(シナリオや音楽・効果音の同期といったものは当然のこととして省く。まあコレが一番重要なんですが)。このように
意外と演出の幅が限られるADVだが、先ず初めに誰しも考えるのが「量の増加」であろう。立ち絵ならバリエーションを、一枚絵なら量と差分(表情など
絵の一部だけ変えたもの。厳密に言えば立ち絵も差分なのだが)を増やすこと。余談だが、シナリオが話題になった「君が望む永遠」だが、演出面にお
いても当時としては出色のデキだった。「君望」での演出技法については後述するが、結構後発作品に影響を及ぼしてると思う。
 これは今までも増加されてきたし、今からも追求されるだろう。しかし、この方法は製作者の負担が大きい。よって、ある程度まで量が確保されたら今
度は質の変換が求められるのではないかと思う。

立ち絵芸
 立ち絵自身を動かす演出。別に私がそう呼んでるだけで正式名称じゃないです。例えば、
簡単なところでは「うん」とか「はい」とかのYESの返事の時に立ち絵を微妙に上下させること。これは頷きを表現している。ただ、この表現はむしろRP
G、特にSFCの頃のFFに起源があるような(4では最終決戦の時に頷くくらいの演技が、5では結構多彩に、6では細かい動きまで行ってた。個人的に
はFFはSFC時代が好きだったなぁ。ビバ2D)

やや分かりにくいが、右が頷いた時の頭の高さ。準を例に使ったのは趣味

また、大きな動きでは


上の絵の様にキャラを動かして歩いているのを表現することも出来る。

 また、ちょっと拡大解釈になるが「セリフに合わせての表情変化」もある。例えば、ノリツッコミでの会話で
「そうそう・・・って違うでしょ!」
 (笑顔)    (怒り)
とやるようなもの。もっとも、コレは文章を最後まで読んでもらわないと気付かない演出で、「声付きセリフは最後まで聞かないで飛ばす」ような人(含む
私)には気付いてもらえないどころか煩わしいと思われるかもしれない。一応「・・・」の部分でクリック必要にして2つに分ければ、声を最後まで聞かない
人にも演出を見てもらえるが、今度はクリック数が多くなって煩わしい、という欠点も出てくる。

左の絵は「えっ?」と驚いてる時で、右が「うん」以降の普通に戻った時の表情

 もう一つ、立ち絵芸で最近使われだした(気がする)のが背中芸(これまた勝手に命名)。
背中を見せる立ち絵は、単にバリエーションの一つだけでなく、相手との距離を表現するのに適している、と私は思う。当たり前だが、絵は平面であ
る。さらにそれを映し出すモニターも平面である。遠近法など使って立体に見せようとしてもやはり平面に見えるのは覆しがたい。そうなるとどうなるかと
言うと、キャラと背景は頭では別個のものと分かっているが結構同じのものとしてみてしまう傾向になる。
 しかし、キャラが背中を見せることで背中を見せているキャラとその後ろにいるキャラ及び背景を明確に意識させることになる

―――――→正面向いたキャラ―――→キャラ及び背景    
   ↑                 ↑
(視点の動き)         この差が曖昧

―――――→背中向けたキャラ―――→キャラ及び背景
   ↑                 ↑
(視点の動き)         この差が明確

左の絵と右の絵では右のほうが相手との距離を感じられるのではなかろうか。

この背中芸は「マブラブ」で顕著に使われてたが、マイナーながらぱれっとの作品では初期から使われていたことも挙げておきたい。
今のところ究極の立ち絵芸はポリゴンを使って体の動きだけでなく表情と表情の間の動きすら埋めた「らぶデス」だろうか。全てアニメにした「School D
ays」もあるが、これは最早立ち絵だ一枚絵だという世界ではないからなぁ。

漫符の活用

漫符とはその名の通り「漫画の符号」のこと。いわゆる「お約束」として長年使われてきたためその記号だけである程度感情表現が表せる。どちらかと言
えば立ち絵で表情を表せるADVよりそういうことが出来ないRPG(テイルズやブレス(オブファイア)では定番)なんかでよく使われている。例を挙げると

焦りの漫符としての「」                          怒りの漫符「青筋マーク

他にも、怪我をした時の「絆創膏」や、「ちびまる子ちゃん」で有名になった青ざめた時の「額に縦線」などがある。ちなみに、右の絵は分かりにくいがモ
ニターを主人公の顔に見立ててキャラより前に青筋マークを置くことで主人公の怒りを表してる。個人的にはキャラに被せない方がいいと思うが。

 漫符は単純にキャラの状態を示す以外にも、表情と相反するものと組み合わせて
・「青筋マーク+笑顔」で「怒ってる笑顔」
・「汗+笑顔」で「ごまかし笑い」
といった描こうとすると中々難しい表情を簡単に作ることが出来る。

他には「感情の深度」を表現するのに向いてる。「感情の深度」というと分かりにくいが、「青筋マーク」の個数で怒りの大きさ(1個で不機嫌、3個で激
怒とか)を表現するような感情の段階を示す。また、数だけでなく表情との組み合わせでも表すことが出来る(ツッコまれて「焦り顔」、更にツッコまれて
「焦り顔」+「汗」)

 ただ、漫符は分かり易い反面、コミカルな場面でしか使えないのが難点か。ただの立ち絵に漫符が入っただけでコミカルに見えるのは、漫符が「記号」
でそれが入っただけでその場の雰囲気が固定されるからだろうか。「金髪+ツインテール=ツンデレ」みたいなもので(←その例はどうか)

●カットイン
 元々はアニメ用語で、1画面を分割して複数の場面(主に表情)を表示するもの。同時に多くの表情を示すことで緊迫感を表すのに適している(気がす
る)。サンライズが多用した技法らしい。しかし、ここでいうカットインとは一枚絵を切り取って表示するもの。「Fate」で良く見られた表現で、あまりそれ
以外では見られない(と思う)。元々、一枚絵は描き込まれてるので切り取っても見劣りはしないし、アニメと同様緊迫感を示すのには良い。そういえば、
一枚絵の無い「ひぐらしのなく頃に」(最新作の「罪滅し編」では一枚だけあったけど)では、立ち絵の眼だけカットインが使われてました



 先に書いたように元はアニメの用語だが、ADVとしての表現のルーツはFC「キャプテン翼」あたりではないかと思う。2の翼がサイクロン覚えるシーン
FCゲームでも屈指の名シーンであろう。

●攻撃エフェク

 最近伝奇物やバトル物がエロゲでも増えてきたので(これは所謂「ジャンプ黄金時代」のバトルマンガの洗礼を受けた世代のクリエイターが作ってるか
らであろうか)良く見かけるようになったのがこの演出。主に一枚絵に剣の軌跡や拳の打撃を示す画面効果(と同期した効果音。プレイヤーに対する影
響はむしろエフェクトより効果音の方が大事かもしれない)を付加することで戦ってる臨場感を演出するのが目的。
 「Fate」の攻撃エフェクトは見事だったが、最近では「はぴねす!」や「AYAKASHI」も凄かった。動いて(そして音と同時に聞いて)ナンボな攻撃エフェク
トなのでスクリーンショットにして見ても大したこと無いから今回は画像の例は挙げないが、「AYAKASHI」なら体験版、「はぴねす!」なら「ハチべんち」で
その一端を見ることが出来るので興味ある方はどうぞ。
 ルーツを考えると、エロゲなら「痕」の鬼の爪→流血エフェクトあたりが私の記憶に残る最古のもの。エロゲ(ADV)に限らないなら、FFの武器を変える
とエフェクトも変わるのなんかが思い出される。確か2からだったか?

●デフォルメ

コミカルなシーンを演出する時は絵柄自体も変えてしまおうという演出。基本的にキャラをSDで表示することが多い。一枚絵の場合もあるが、小コマ
と言われるミニサイズのウインドウグラフィックで表示されることが多い。


これはデフォルメキャラを一枚絵のように大きく表示すると違和感あるのとグラフィッカーへの負担の軽減だろう。
 tinamini,上の小コマだが、私が初めて見たのは「Lien〜終わらない君のうた」(もうDC版は出ないんでしょうな)。それが多用されたのを見たのは今は亡
きシーズウェアの「ぱられるは〜もにぃ〜」。一般的に認知されるようになったのが「Lien」のシナリオライター・荒川工氏と「ぱられる」の原画家・ことみよ
うじ氏。一般的に認知され始めたのがその2人が組んだ「このはちゃれんじ」で、その2人と大いに関わりのある(というか荒川氏が社長)なpropelle,では
お家芸と奇妙な繋がりがあることも付記しておく。

また、「君が望む永遠」の遥伝説、「マブラブ」のヘタレ絵(正式名称)の様に原画家を変えてくる場合もある。違う人が描くためにインパクトも大きいが、こ
れは複数の原画家が必要なので沿う簡単には出来ないのが難点か。最近では「塵骸魔京」にて一定の条件満たすとイベント絵がキャラメルBOXの暗黒
絵師ヨダ氏によるものになるというのがあったが、これもこの部類に属するものだろう。

 余談だが、写実を基本とする西洋美術はデフォルメという概念が薄かった。故に人物を大胆にデフォルメした浮世絵は西洋の画家にかなり衝撃と影響
を与えたらしい(有名どころではゴッホとか)

浮世絵の現実ではありえない顔と構図

 それから考えると日本の誇るガンダムがSDで親しまれてるのも、ある意味日本が誇れなくも無いような気がしないでもないエロゲにデフォルメが入って
くるのは当然と言える・・・というのはあまりにも無理矢理すぎる結論か。ちなみに、美術史とかやってない又聞きの知識なんでここに書いてあることは話
半分で。




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