ライトノベル・レビュー
BLACK BLOOD BROTHERS 2〜5巻(あざの耕平 イラスト:草河遊也) new |
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まず最初に言っておかなければいけないのが「本作が前編であること」ですね。
続き早く書いて下さいね〜、あざの先生。新井先生とあとがき合戦してる場合じゃないですよ?(笑)
1巻ラストの大暴走などありましたがやっぱりBBBにはドラマガ連載の短編から入っているので正直ジローが強いとか言われてもいまいちピンとこなかったんですよね。
まあ確かに短編でもジローの強さは圧倒的ですけどそれでもどちらかといえば理知的で「力」というのをむやみに見せるようなタイプではなかったですし。
んで今回冒頭からジローが暴れてくれるわけですよ。
香港時代の触れれば切れるような荒くれ者ジローさん。「銀刀」と呼ばれ同族を斬った返り血で真っ赤に染まるジローさん。
いやもう圧倒的でした。
とにかく冒頭で吸血鬼が、というかジローが一線を画した存在なんだと思わせといて、それが本編でのジローの微妙な立ち位置に繋がるわけですよ。そういうのが上手いなと思いました。
そしてこういう描写があってジローが強いと思わせても、それよりも強力な吸血鬼が存在するということがまたショッキングなわけで。
今回のメインは特区における政治と力のパワーバランスの紹介といった感じですね。
人と吸血鬼、その吸血鬼にも大きく分けて3つの勢力があってそれぞれがそれぞれの思惑(といってもケインはセイに同調、というか従っているような形でしたが)で動いている。
そういった微妙なバランスの上で特区は動いている。どこかが狂えばそれだけでおしまいといったほどに脆いバランスで。
まあそうならないのもあくまで吸血鬼サイドが友好的な態度を取っているからですが。ゼルマンは「なげやり」なんでしょうけど(笑)
そしてその友好派の頭にいるのがおそらく現存する吸血鬼でも最強クラスの「東の龍王」だからというわけで。
結局のところ人にしたって吸血鬼にしたって自分よりも力のあるものの決定には従わざるをえないというかそういう社会の縮図で特区もまた動いているんだなと感じました。
そういう風に感じながらもゼルマンは勝手に動くし陣内はひっそりと陰謀をめぐらすし、上が抑えつけたってやるやつはやっちゃうんですよね〜。
こういう組織のパワーバランスの妙っていうのは「Dクラッカーズ」なんかでもそうですが上手いですよね、やっぱ。
そしてもう一つのメインが人と吸血鬼の溝というべきものでしょうか。
短編ではミミコとジローが和気藹々とボケをかましていますがそれでもやっぱり人と吸血鬼は違うものというわけで。
とにかく吸血鬼には「力」がある。それだけで十分に人との間に溝が作れるし、なによりその「力」に基づいた思考を展開できるから基本的に人とは相容れない。
いくら暴力的に見えても彼らにとってはそれが当たり前だし、そして「力」あるものの思考からすれば非常に理知的な考え方でもあり、そして「力」が無いものにはどうやったって理解できない。
百年も生きたジローにはそれがよく分かっている。
そんなジローを「人間も吸血鬼も命の価値は平等」という理想をあくまで抱き続けるミミコがどう受け入れていくか、後編の見所はそこだと思っています。
ジロー登場で大きく揺れる特区、さらに「九龍の血統」の出現も相まって物語りはさらに暴走する……!!
ってなわけで次が気になります。いや、マジで。
(紙様)
(3巻の感想)
いや〜、燃えた燃えた。
あざの先生お疲れ様です。いいもの読ませて頂きました。
「香港聖戦の英雄」なジローさんですが、「闇の母」の力を使っていない普段モードの彼だと結構下のほうってなくらい今回のパワーバランスはイカれてた。
そんな連中がバトルやらかすわけだから、面白くないわけがない。
ゼルマン、セイはすごすぎてもう何だかわからんくらい。
つかいいなあ、ゼルマン。基本的には悪い人なのに憎めない奴です。「Dクラ」でいうなら甲斐のポジションっすね。
「『ウォーカーマン』以外なら楽勝だ」ってガキ大将かおまいは(笑)
コタロウとラーメン食ってるシーンが今回一番好きだったりする。なんかほのぼのするよね〜。
他にもケインの獣化とか。圧倒的な暴力感がナイスです。
あと、戦闘におけるスピード感とか。1巻のバイクとかもそうだけど、高速で移動しながら人外バトルやらかすの好きですよね、あざの先生。「Dクラ」でもやってたし。
なんだかんだでミミコと和解したジローですが、今回二人が和解したのは二人だけの力でなく、というかほとんど「闇の母」アリスの力によるものが大きい。
ミミコだってジローが一人でいるのは良くないと思ってはいただろうけど、そういうのは漠然とした想いでしかなかったはず。言葉にできたのはあくまでアリスが力をおよぼしたからで。
アリスが望むのはジローの幸せか、それともジローとミミコ、いやジローと人間が手をとりあって進む道なのか。
カーサ姉をはじめとする「九龍の血統」の面々やその目的もはっきりとしてきた。
BBBはまだまだ加速しそうです。
(紙様)
(4巻の感想)
あざの耕平の送る黒と赤の血の物語「BLACK BLOOD BROTHERS」
第4巻はその始まりの物語。望月次郎と望月ジローのお話です。
望月ジロー。
齢百を超える「古血(オールドブラッド)」にして「銀刀」の異名を誇る吸血鬼。
そんな彼だってもともとは人間だった。
これは「人間」望月次郎が闇へと、「吸血鬼」望月ジローへと転化する物語。
そして運命の恋の物語。
長らく闇のベールに包まれてきたジロー最愛の人「賢者」アリスの登場です。
「人間」望月次郎は彼女と運命の恋に落ち、吸血鬼へと転化します。
次郎は優れた剣術の使い手でありますが結局は人間に過ぎません。そんな彼が首を突っ込むのが吸血鬼の跋扈する怪事件で、次郎はほとんど役に立てません。
アリスに一目惚れし、彼女のために剣を捧げたい一心の次郎ですけどその心を届けようにも人間と吸血鬼の間の溝――力も心も――は埋まることがなく、打ちのめされてしまいます。
それでも次郎は立ち上がる。夢を示してくれた先輩に背を向けてでも次郎は進みたかった。そして鎖を断ち切って前に進み、アリスのために働く。結果として人間を止めることになってしまったわけですが全部断ち切ってアリスのために尽くせる、ジローにしてみればこれ以上の幸せはないでしょうね。
それだけにカーサの裏切りによってアリスを失ってしまうことがこの後ジローを際限なく苦しめることになるわけですが。
欝からの脱出。逆転のカタルシス。「Dクラ」から連綿と受け継がれているあざの節は健在で最後次郎が命がけで駆け抜けるシーンはまさに手に汗握る展開でした。
しっかしミミコはそんなに偉くなるんですかね?ある意味それが今回一番驚いたポイントでしたよ。
(紙様)
(5巻〜風雲急告〜の感想)
平穏な時間は簡単に崩れ去る。楽しかった時は戻らない。
特区に発生したうねりはジローを、ミミコを、ゼルマンを飲み込む。
あざの耕平の送る赤と黒の血の物語「BLACK BLOOD BROTHERS」はタイトル通り風雲急を告げる展開に。
今回はついに吸血鬼の存在が公になってしまい、登場キャラたちの地盤が大きく変化してしまうお話。
中でもミミコとゼルマンに訪れた変化は大きく、今回はこの二人が焦点だったかな、と。ミミコは上を向き、ゼルマンは下を向いたといった印象。もっともミミコもカンパニーを解雇されてフリーターになってしまったので意気揚々とはしてられないでしょうが。
陣内の野望通り(笑)成長するミミコはついにカンパニーの枠を超えた道を歩むことを決意する。根底にあるのは人と吸血鬼の共存。それはシリーズ開始当初から一度もぶれていないミミコの理想。
吸血鬼も対等に、『人』として扱うことのできるミミコ。陣内が期待してジローが認める彼女の本当の強さってのが花開き始めたように感じられました。
それに対してゼルマンへの変化というのは逆に破滅的なもので退屈を何より嫌っていた彼はついに『死』への願望に気づいてしまう。
たった一人きりになった血統、長い時間の孤独、飢えを満たすため同族同士で殺しあった過去。いろんな物が今回の騒動で噴き出してしまった感じ。まあザザが煽った部分が多々ありますが。
で、ゼルマンは自らを満たすために大暴れ……といってもかなり手加減してたんでしょうけど。
しかしまあ吸血鬼はマジメに年功序列なのね。ケインも十分強いはずなんですけど、ゼルマンが規格外に強すぎるというのか。
というかケインはジローよりも強いはずなのに今んところパッとした活躍が無いような(汗)。香港ではダール卿が相手だったんだろうし、それなら絶対勝てそうにないだろうしなあ……
そして最後の宣戦布告。いくらゼルマンでもセイには勝てそうにないですが(セイはゼルマンの倍近く生きてるっぽいし)どうなることやら。というかあの二人が戦ったら特区が消滅しそう(笑)
あと今回はあとがきの通りオッサンが大活躍。
特におちゃめな中年、陣内部長の魅力は素晴らしい。
しかし絵師つながりでダイアン・ブンクト警部みたいな人かと思ってたらそうでもなかったりして。普通にカコイイオッサンじゃあないですか。
さて、萌えキャラワインも投入してさらに加速するBBB。
この燃え展開、そして加速感。早く新刊が出ないと死人が出るやもしれぬ。
(紙様)
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