ライトノベル・レビュー

半分の月がのぼる空 1〜6巻(橋本紡 イラスト:山本ケイジ ) new

少女は思い病を抱えていた。そして多分死ぬと自分でもわかっていた。
少年はそんな少女と出会った。我侭な彼女に振り回されながらも少年は段々彼女に惹かれていった。彼女のためなら何でもしてやろうとさえ思った。
少女もそんな少年に惹かれつつあった。諦め――死ぬ覚悟さえしていた彼女の心に少しずつ変化がおきていた。
「生きたい」、と。強く、強く……

病院で少年と少女が出会って惹かれあう。ただそれだけの話です。
別に魔王が復活したりしませんし世界を巻き込む陰謀も出てきません。
「ただそれだけ」でないのはヒロイン里香の病状だけ……
もう凄く切ないんですよ。裕一は里香のためにいつでも一生懸命頑張るし、里香もそんな裕一を見て少しずつ心を開いていくんです。
普通ならラブコメの王道もんですけど、ヒロインが明日も知れない身の上だってだけでもう……

正直な話、僕は「感動モノ」とか「涙モノ」というのがいまいちわかりません。皆が泣く漫画とかアニメとか見てても泣きません。とことん枯れてる人間だな、と思うこともしばしばです。
そんな僕でも「半月」はこう、グッときました。泣きはしませんでしたがなにか、こうきたんです(頭悪い文章だなぁw)

僕は基本的には「ハッピーエンド」主義者です。鬱とか泣きとかは正直嫌いだったりします。
みんなで幸せに、っていうのがどれだけ阿呆な理想かってこともわかっちゃいますが、願わくば裕一と里香、亜希子さんに夏目先生にも幸が訪れますように……

●余談
里香の尻に敷かれっ放しの裕一君。その身の上のせいかよく「悠二」君と間違われています(笑) 
紙様


3巻の感想

こうなることはわかっていた。ハッピーエンドを望んでいてもきっとこうなってしまうだろうというのはわかっていた。
わかっていても希望にすがりたかった。里香が倒れるまでの時間があまりに輝いて、幸せに見えたから。
きっとみんな一生懸命なんだと思う。それでも大きな「流れ」みたいな奴は容赦がなくて、そして裕一も里香もそれに抗えるほど大人じゃなくて。
そういう2人だからこそ、この物語は良いのだと思う。
バカで単純でどうしようもなくて、ガキと大人が半分くらい混じった青春という名の時間。
そんな時間を必死になって生きていこうとしているから2人の物語は映えるのだと思う。

「半分の月がのぼる空」はこの物語の直撃世代、高校生にぜひ読んでもらいたいと僕は思う。
ここには青春の苦悩がぎっしりと詰まっている。目をそらしたくてもどうしようもないことが山ほど詰まっている。
しっかりと考えて、受け止めて欲しいと思う。

……まあ僕がえらそーに言えた義理じゃないですけどね、うはははは(笑)

で、まあマジメな話半月は多分次の4巻で終わりだろう(短編まとめてさらにもう一冊くらい出すかもしれないけど)
これから読もうとする読者諸兄は1,2巻と読んでそこで止まることをオススメする。
3巻の「引き」で何ヶ月も待つのはひじょ〜につらいですよ、マジで。
紙様

4巻の感想

もうちょびっと続くようです。「4巻完結」とか言ってスミマセン。読みが外れました。

夏目の過去と裕一の未来と現在、全てをくっつけたのが今回のお話。
前回のラストからは夢も希望も感じられなかった。
無論今回だっていきなり里香が回復して未来が明るくなったわけじゃないけれど。
それでも夏目が全てを捨てて一人の女のために生きると決意したこと、そして小夜子が夏目と生きた時間を幸せに感じていたこと。これらはきっと希望に繋がるはずだ。
裕一と里香の関係はほぼ同じと言ってもいいくらいに夏目と小夜子の関係と同じだ。
だから夏目は裕一に自分と同じ負い目を感じさせたくないから、また過去の自分を裕一に重ねて見るのがつらいから裕一を里香を遠ざけようとした。
でも裕一は前に進んだ。夏目だって結局はそうした。なぜならそれが『幸せだから』だ。
死ぬことは決して幸せではない。けれど、残された時間に愛する人とともに歩めたならば、それを「幸せ」と感じることができたならば、きっと先が見えなくても生きていけるんだと思う。
こういう風に一緒に歩める人を見つけ、ともに歩んでいくことは本当に「幸せ」なことなんだと思った。

とまあこういう感じにしんみりとしたお話なんですけど、恒例の覆面レスラー馬鹿話も快調。
「マリポーサ!!」は大爆笑。しばらく腹筋が痛くなりましたよ。
裕一もあんなアホなイベントの後に告白(つかプロポーズだろ、あれ)しなきゃんらんっつーのは不憫やね……
紙様

5巻の感想

一応決着の5巻。
まあ話としては前巻のラストで裕一と里香が「ずっと一緒にいよう」と誓った時点で終わってるとも思えますが。

というわけで、ほぼ決着のついた裕一と里香の関係はそれほど展開がなく(まったく無いわけではありませんが)、今回はどっちかっつーと司とみゆきの話の比重のほうが大きかったかな、と。
自分の気持ちを見ない、素直になろうとしないみゆきと自分の気持ちは分かっているのにどうしたらいいのかわからない司。
みゆきはやっぱりどう考えても裕一に気があるとしか思えないけど、それを絶対にわかろうとしない節があるわけで、そこをどうにかしないとみゆきは前に進めないと思うんですよ。
そういう彼女の支えになってあげたいと思う司の気持ちがすごく純粋で、ああ青春だな、と(笑)
それだけに恒例とは言えど覆面レスラーネタは今回は蛇足だったかなって思いました。特に笑いも取れなかったし。

この5巻は一応事実上の最終巻とのこと。
最後の6巻はリバーズエンドでいうところのAfter Daysに相当する話のようです。
里香と裕一の迎えるラストシーンは一体どんなものなのか。できれば「死にエンド」だけは避けて欲しいなと思います。
紙様

6巻の感想

橋本紡の送る「半分の月がのぼる空」もいよいよ完結。
日常へと帰っていった裕一と里香のなんでもない、普通の生活。

とその前に

半分の月がのぼる空 one day

第5巻、第6巻の合間の話ということで電撃ビジュアルノベルから「one day」が発売されている。
伊勢の町を巡る裕一と里香の何気ない一日の話である。
機会があれば読んでもらいたい。

恒例の2色カラー4コマ、今回はサイコーでした。
小さくてもいいじゃないか!!(何がだ)

生きているって素晴らしい。
普通に生活するってことがどれくらい大切なことか。
ただ生きているって、それだけのことがどれほど愛おしくて輝いていることなのか。
裕一と里香は全部見せてくれた。まだ18年生きただけの二人がここまで見せてくれた。先が無いってわかっているのに未来を信じるって、そういうことも見せてくれた。
なんかもう言葉にするのがバカらしいくらい。
とにかく読んで、心の奥から湧き出たものを大切にしろって、そういうことしか言えない。
某香港映画の人ではないが

考えるな!感じるんだ!

と、そんな感じ。いや、マジで。

ああ、なんかもうね、ホッとして幸せな気分でいっぱいです。
橋本紡先生と山本ケイジ先生、そして登場したすべてのキャラクターたち、お疲れ様でした。そしてありがとう。
本当にもう「半分の月がのぼる空」が読めて幸運でした。もう一度ありがとう。
紙様





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